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不安や怖れはシャドウとして無意識に押し込まれています

心理学

人は、心の中に何らかの不安や怖れの感情を持っています。

例えば、

試験に合格するかどうかどきどきする。
収入が少なく今後の生活が心配である。
夫婦として共に生活していくことが不安である。
今自分の進んでいる道が正しいのかどうかが不安である。
会社での業績が上がらなくて夜も眠れない。
こんなことをしたら人から敬遠されるのではないか。

実は、これらに共通するものがあります。

それは、未来に起こることで、すべて目に見えないものであるということ。

人間は、視覚的に確認できるものから身を守ることはできます。

道路を歩いているときに車がこちらに向かってくれば、目で確認したうえで、道端に寄ることで身を守ることができます。

でも、我々は不安や怖れなど目に見えない心に対して、回避するすべを持たないのです。

唯一できることは、そう思わないようにすることです。

したがって、これらは、多くの場合、ないものとして無意識という引き出しの中にしまい込まれることになります。

スプリング(ばね)をイメージしてみてください。

スプリングを縮めた時に、跳ね返る力がため込まれる原理と同じです。

不安が強ければ強いほど、そのエネルギーは強くなります。

では、どうしたらこのエネルギーを感じることができるのでしょうか。

ユングの心理学では、この抑圧された見えないエネルギーをシャドウと呼んでいます。

シャドウについて、例を挙げてみます。


2019年6月に、かつて官庁の事務次官をしていた父親が息子を殺害するという事件がありました。霞が関において事務次官になるような人は、我が強く策略に長けた人が多いのですが、この父親は、心が穏やかな人で、政治の力を頼ってまで出世しようなんていう意欲がない方だったそうです。

誰もが、信じられないと思うはずですが、これも一つのシャドウなんです。

安全であればあるほど、安泰でいればいるほど、それを失うことへの怖れが強く起きます。

失うことなど考えたくないから、無きものにしようと心がはたらくんですね。

かくして、この方はそうやって生きてこられたのだと思います。

表面上はそんなことは何もない立派な人。

しかし、それがこの方の心には大きなエネルギーとして存在していたのです。

そのシャドウを肩代わりしていたのが息子さんということです。

息子さんは、その心を受け取って成長していきます。

つまり、父親の心は、無意識に息子さんに投影されていた。

そのシャドウを自らの目の前に見せつけられたときに、受け入れることができずに、こういう悲劇につながっていると考えられます。

その受け入れられないものは、実は自分自身の内にあったということです。


我々は、このシャドウを心の中にあるものとして感じ、受け入れ、統合しながら、心の調和をはかっていく必要があります。

心の可視化

見えないものが見えるようになる。

見えないままでいる、見ようとしない自分でいることは、大きなシャドウを抱え続けることを意味します。

気づいて、受け入れて、見えて、実感できれば、思考も行動も変わります。

これも、カウンセリングにおいてこそ可能なことだと思っています。