目の前に映し出される景色は、心の投影である。
私は、いつもこの原則に従って、カウンセリングを進めます。
こんな昔話があります。
ある山の麓に老人が住んでいました。
隣の町から流れてきた一人の青年が老人に尋ねました。
「ここにはどんな人たちが住んでいますか?」
老人は聞き返します。
「君はどんな街に住んでいたのかね。」
青年は答えます。
「私が住んでいた街は、悪い人がたくさんいるひどいところでした。」
すると老人は、こう答えるのです。
「ここも同じようなものだぞ。」
青年はいぶかしげに老人を見ながら、街に入っていきました。
そして、ほどなく老人が言ったとおりの街であることを悟りました。
しばらくして、別の青年がやって来て、老人に尋ねました。
「ここにはどんな人たちが住んでいますか?」
老人は同じことを尋ねます。
「君はどんな街に住んでいたのかね。」
青年は答えます。
「私がいた街は、やさしくて親切な人が多かったです。とても素晴らしい人々ばかりでした。」
老人の答えは同じでした。
「この街も同じようなものじゃよ。」
青年は老人に丁寧にお辞儀をして、街に入っていきました。
そして間もなく、この老人が言ったとおりの街であることを悟りました。
つまり、自分の心の中の世界が投影されて、そのように映って見えるということです。
よく、人間関係でお悩みの方が、会社を転職したらこの辛さから逃れられると考えます。
果たして、そうでしょうか。
心の中に、こういう人はダメだ。
この人には付いていけない。
こんな人とは一緒にやっていけない。
そんな心の世界をそのまま転職先に持っていって、この方に見える世界が変わり得ると思いますか。
答えは、NOなんです。
ご自分の心の世界が変わらない限り、どこに行っても、世界のどこに逃げようとも、同じように映し出されるのです。
これが、「周りに見える景色は心が映し出している。」という理屈です。
この法則を発展させていくと、人間関係にも活用できます。
それは、自分の見える世界と相手の見える世界は違っている。
だから、違っていて当然なんだという前提で相手の話を聞くこと。
すると、この人にはそのように映っているんだなあという認知が生まれます。
それが、相手見方や感じ方を受け入れられることにつながっていきます。
自分が見えている世界は相手にも同じように映っているはずだ。
このように、自分と相手が同じだと錯覚したときに、争い事が始まります。
人と人は完全に違う存在である。
いつでも、この原則を肝に銘じておいてください。
同じを求める心を脱して、違いを認める思考を身に付けていくことです。