心理カウンセラーの中に、時々こんな方がいらっしゃいます。
カウンセリングは傾聴するものだから、アドバイスをしてはいけない。
私は、このスタイルのカウンセリングを
ロジャースの呪い
と呼んでいます。(ロジャース学派の方、ごめんなさい。)
カール・ロジャースは、アメリカの心理学者で、日本の心理学に大きな影響を与えている人物。
相談の対象者を患者ではなく、クライエントと呼んだのも彼が最初。
非指示的カウンセリングの提唱者で、来談者中心療法という方法を世に広めたのも彼。
そんな偉大なロジャースの名前を借りて、「呪い」などと言うことには少し抵抗がありますが、問題は、彼の理論を私たちがどう解釈しているかということ。
そもそもが日本の心理学の基礎は、海外の研究書籍の翻訳版で作られています。
翻訳者の和訳ですべてが決まる。
こういっても、言い過ぎでないほど、影響が大きいものです。
彼が、非指示的と言った理由には、当時のアメリカのカウンセリング界の現状があります。
ロジャースがこれを提唱した1900年代中盤のカウンセリングは、職場や教育の場で行われる訓示的、指導的な要素の強いものでした。
職業相談では、ああしなさい、こうしなさいと言われる。
教育相談でも、あなたのここを直した方がいい、こうするべきだと指示される。
彼は、こんな現状に憂いを抱いていました。
そんな背景に対して生まれた言葉が、非指示的カウンセリング。
しかし、敗戦直後の新しいライフスタイルを模索していた日本では、これが大いに受け入れられました。
国内の心理学やカウンセリング手法の多くが、この理論に基づいて書かれています。
でも、そのうち言葉だけが独り歩きを始める。
そうして生まれるのが、カウンセラーの禁止令。
指示してはいけない。
アドバイスもいけない。
意見を言ってはいけない。
価値観を押し付けてはいけない。
自分自身の存在を押し殺さなければいけない。
一つの禁止令は、次々に制限をかけていきます。
あれもだめ、これもだめ。
そのうちに、カウンセラーは従者、クライエントは神様になっていきます。
こうして、ただ聞くことしかできなくなっているカウンセラーがいかに多いことか。
職業経験上、臨床心理士であるスクールカウンセラーと何人も接してきましたが、彼らの中にもそういう方が数多くいらっしゃいます。
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