トラウマを抱えるクライエント様へのご助言として、下の過去記事で説明しています。
この記事の中では、
被害者の立場でいることを選択し続けるご自分自身
と表現して説明していますが、これこそがアドラー心理学の考え方と一致します。
そこで、今回は、アドラー心理学でいう目的論について具体的な事例をいくつか挙げて解説させて頂こうと思います。
世界の心理学界では、3代巨頭と言われる存在があります。
フロイト、ユング、そして、もう一人がアドラーです。
彼は、フロイトと精神分析についての共同研究をしていましたが、そこから独立し、個人心理学(アドラー心理学と呼ばれる)を確立しています。
トラウマの捉え方
アドラー心理学では、トラウマについて以下のように捉えます。
このことは、わたしたちに、
という可能性を与えてくれます。
アドラー心理学が勇気を与える心理学と言われるのは、この点にあります。
アドラーは、過去の出来事について、このように解説しています。
「いかなる経験も、それ自体は成功の原因でも失敗の原因でもない。我々は、常に経験の中から目的にかなうものを見つけ出して利用していく。人生は、自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである」
「嫌われる勇気」より
これが、アドラーの中核をなす考え方であり、人生の目的論と言われる部分です。
フロイトの心理学では、人間の行動の原因をその人の過去のトラウマから見出すことに主眼が置かれます。人間は、生育環境からの影響を受けることを前提にしています。
アドラーは、フロイトの理論と違って、あなたが目的をもってトラウマを利用していると考えたのです。そして、その目的を変えれば、いとも簡単にあなたの人生は変わると言うのです。
原因論と目的論の違い
例えば、以下のような場合。
引きこもっているクライエントがいました。彼女は、外に出て人に会うのが怖くて不安だと感じています。それは、幼いころ、厳格な両親に育てられ、自分に自信が持てなくなったからだと言っています。
この彼女の人生を、幼いころのトラウマに原因があるかわいそうな女性としてしまうのが原因論です。
ところが、アドラー心理学では、これをバッサリといとも簡単に否定するわけです。
彼女は自らの意思で部屋に居続けることを選択している。その目的論として、自信がない自分を演出し、幼いころの経験をトラウマとして利用しているのだと・・・・。
これは、頭をハンマーで殴られるような衝撃です。
こんな解釈の仕方があるのかと思いますが、皆さんはいかがですか。
カウンセリングの場面でも、クライエントが様々なトラウマの場面を語ります。たいていが、原因論として語られます。
虐待を受けた
試験に落ちた
犯罪被害に遭った
暴言暴力を受けた
親と死別した
これを原因論のみで捉えると、
となるのですが、
目的論だと、
原因論のみでお話を聞くと、
「かわいそうなクライエントだから同情して、共感して、感情を癒しましょう。」
で終わりますが、
目的論も含めて考えれば、
「あなたの中に今の感情が湧き上がる理由があります。それが何かを見つけることです。」
となり、内面に入り込んでいくきっかけを与えてくれます。
アドラー心理学では、過去の経験や育った環境を固定的なものとして考えておらず、むしろ人間の内面をより深く見つめているように思います。
原因論から感じる閉塞的な感覚がなく、自由で可能性に満ちている感じがします。
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