カウンセリングを行っていると、
「とても人目が気になります。」
「街に出るのもおっくうです。」
「大勢の前で話すことが苦手です。」
というお話がよく出てきます。
あの大物お笑いタレント「萩本欽一」、通称欽ちゃんでさえ、はじめは人前で話すのが全くだめだったと、プロフェッショナル仕事の流儀で語っています。
これには、なかなか気づけない決定的な要因があります。
自分も10代から20代の頃、人目が気になって仕方がありませんでした。
私は、いやおうなしに大勢の人前に立つ職業に就いていましたので、
「こんなことを言ったら、嫌われる。」
「きっと、周りの人からはこう思われているに違いない。」
などと、思いを巡らすことが良くありました。
相手に受け入れられることがまずありきの思考。
そして、人の評価を気にして、自分らしさが出せない自分。
青春時代でしたから、様々なことが新鮮で楽しかったのですが、その反面、辛さも抱えていたと思います。
では、評価を気にしない自分になるには何が必要でしょうか。
家族や友人に相談すれば、
「そんなの、周りを気にしなければいいのよ。」
「あなたはあなたなんだから。」
などと簡単に言うでしょう。
これは、理屈ではわかるのですが、あまりに漠然としています。
もちろん、何度も試みたのですが、改善されることはありませんでした。
周りを気にする自分
何とかしたくて、人前で話すたび、人前に立つ機会のたびに、あらゆる方法を試しました。
こうしたことを繰り返すうちに、それなりに話せるようになりましたが、なぜか心はすっきりとはしませんでした。
それは、経験を積むという漠然とした手段が、人目が気になることへの根本解決だとは思えなかったからです。
私は、その根本的な原因がどこにあるのかをずっと模索し続けてきました。
先輩から指導も受けました。
人のいいところを真似してみました。
でも、その答えは、出てきませんでした。
人目を気にする自分は、自分に自信がないからでしょうか。
本来なら、自信があれば何なくできそうだと考えるはずです。
でも、私は、何でも自分の手でできると思いあがっていたほどの自信家でしたから、これは違います。
自信があっても、人目が気になる。
では、話すための能力が不足していたからでしょうか。
これは、私の場合には少なからずありました。
大学のころ、自分の時間の半分以上はアルバイトに明け暮れていましたので、読書の経験が少なかったことから身に付けるべき語彙力が不足していたと思います。
それを取り戻すために、20代後半には、書物を進んで読み、たくさんの文章を書き続けました。
しかし、それで完全に人目を気にしないで話ができるようになったというと、そうではありませんでした。
人前で堂々と自分の意見を述べる人に出会うたびに、その心はどのようにして作られるのかを知りたいと思っていました。
きっと、自分には何か決定的に抜け落ちていることがあると模索しているときに、カウンセリングに出会いました。
感情に向き合い、心の在り方を冷静に見つめることができるようになると、自分の思考パタンに「ある癖」があることに気づき始めました。
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