事例1「夫からのモラハラ」
幸せいっぱいの結婚
Rさんは、12年前に職場で知り合ったご主人とお付き合いが始まり、結婚・退社しました。
子どもも2人授かり、Rさんにとっては、結婚生活は、順風満帆そのものでした。
ご主人は、誕生日のときには必ず祝ってくれて、日常生活でも気遣いや優しさが十分に感じられました。
ただ、Rさんにとって不満だったのが、姑の存在でした。
生活の仕方や子育てについて何かと口を出してくる姑にいささかうんざりしていたのだそうです。
ご主人も自分の母親を悪く言うことはできず、この点に関しては自分の味方にはなってもらえないという感情を持っていました。
あることをきっかけに夫が変わる
Rさんが夫の様子がおかしいと気づいたのが、2年ほど前でした。
ご主人が会社で配置転換になり、年下の元部下が上司になったことがきっかけでした。
家に帰ると吐き捨てる用に不満を言い、納得のいかないご主人の話をはじめは聞いていたのですが、そのうちに子育てで忙しいこともあり、心の余裕がなくなり、次第に話を真摯に受け止められなくなっていったそうです。
ご主人の帰宅時刻がだんだん遅くなりました。
休みの日には、パチンコや競馬に出掛けている様子を知りながらも、Rさんは口に出すことはせずに不満だけがたまっていきました。
感情と感情のぶつかり合い
ご主人もRさんもお互いに生活のズレを感じ始めました。
Rさんも不満を抱えきれなくなっていて、ご主人もそんなRさんを疎んじていたのです。
かつてあんなにやさしいと思っていたご主人は、買い物に行っても荷物も持ってくれない、子育てに関わろうともしない、しまいには家にお金を入れることでさえもいやな顔をしながら渋々払うというようになってしまいました。
そんなある日のこと、お互いに機嫌が悪かったのか、お金のことで大きな口論になりました。
ご主人は、Rさんに
「これは俺の金だ。」
「俺の人生をどうしてくれる。」
と怒鳴りつけました。
お互いに感情を抑えきれず、ぶつかり合うたびにRさんは、怒りと悲しみの感情を交互に持ったそうです。
実際に、60分のお時間のうち40分間はご主人への不満で埋め尽くされました。
でも、ふと一言こうおっしゃったんです。
「本当はそんな人じゃないんです。」
この言葉から、ご主人への本当の心に近づいていったのです。
そこから、ご主人に寄り添ってきていないご自分を責め、本当に苦しい時に何もしてやらなかったことに後悔の言葉も出始めたのです。
「どうなることがお望みですか。」
と尋ねると、
「好きで一緒になりました。そういう気持ちは今でもあります。もう一度、前のようにやり直したい。」
と絞り出すようにお話になりました。
今でき得る行動を共に考えて、実行してみることをお約束して、60分カウンセリングを終えました。
カウンセラーの感想
ご主人に対する憎しみの感情は、ご自身の悲しみの感情そのものであり、それを掃き出すことでたっぷり感じました。
悲しみの感情は感じることで溶けて消えていきます。
その時に、心の在りどころに気が付かれましたね。
その心に向き合い、思いをふくらめるほど、あなたの行動にはレバレッジがかかっていきます。
きっと、ご主人もあなたが感じているように同じ初期の感情はお持ちのはずです。
あとは行動ですね。
今回のセッションでは、お気持ちを掃き出しながら、感情がリセットされるのを感じていただけたと思います。
また、必要があればいつでも心に寄り添い受容いたします。
事例2「障害を持つ夫との関係」
海外への転勤で生活が暗転
個人事業に携わっていたTさんは、20代後半に商社勤務のご主人と出会い、約1年半年のお付き合いを経て、ゴールインしました。
お二人は、数年間共働き生活をしていました。
そんな生活に転機が訪れたのは今から8年前でした。
夫の長期海外転勤が決まり、Tさんは悩んだ末に自分の仕事を中断して、随伴することを決めました。
当初、現地での生活は、買い物には運転手が迎えに来て、家事はほとんどお手伝いさんが来てくれ、Tさんはほとんど何もやらなくてもよいほど楽な生活でした。
ところが、1年ほど経ったころ、ご主人の口数が極端に少なくなりました。
毎日、無口のままスーツに着替えて出社し、同じ時刻に帰宅するという繰り返しの中で、Tさんは心の中で少しずつやるせなさを感じ始めていたそうです。
ご主人は、仕事上で何かあったというわけでもなく、ただ外部との接触をしようとしませんでした。
それとは反対に活動的なTさんは、ご主人が何らかの精神障害をもっているのではないかと疑い始めました。
自分が相談相手になろうと努めましたが、元々自己開示が苦手なご主人には効果がありませんでした。
外に出たいTさんと内にこもるご主人と、生活感覚のずれが出始めました。
Tさんは、夢に描いていた華々しい海外生活のイメージが崩れていくのを感じたそうです。
治療を受けることもできず、そんな悩みを抱えたまま、不安と共に帰国することになりました。
次第に心を開き始めたTさん
カウンセリングでは、お話の対象が周りにいる人や起こった出来事に集中することが多いものです。
Tさんも同様で、初めはご主人のことについて不満をたくさんお話になりました。
しかし、中断していたご自身の事業について話し始めたときに、少しずつ過去についても語り始めました。
20代前半の自分は性格が歪んでいたということ、社会的に成功していない自分は生きている意味がないと思っていたこと、十数回自殺未遂をしたこと・・・、悩みをくぐりぬけて生きてこられたTさんは、これらすべて両親からのネグレクトによるものだと分析していました。
Tさんは、食事を1日に1食を大量にとる生活をつづけ、ワインやビールを大量に飲むような生活で気を紛らわせていたと告白されました。
それでも当時苦しい心を支えていたのが、個人事業の成功だったそうです。
顧客を確保し、満足のいく収入も得ていました。
つまり、それを夫の海外赴任のために打ち切ったことに対して、心の中で納得していなかったというものです。
帰国してからも、再開した事業は軌道に乗り始めました。仕事に奔走するTさんにとって、ご主人との生活は自分の心の重しでしかないとまで言い切りました。
生のプライオリティは仕事と言い切るTさんは、ご主人のせいでご自分の自己実現に支障が出ているとまで告白されました。
心のコアにあるもの
Tさんのお話の中に、心の中の大きな要素に当たることがありました。
「他の男性とのおつきあいがある。」
「私にとっては、SEXはスポーツのようなもの。」
「体を壊さない程度に現状を維持しながらやる。」
その理由は、結婚生活におけるSEXレスだと話し始めました。
なぜそうなったかを振り返るように現在の生活について話し始めました。
「そうすることで満たされる感覚があるんですね。」
沈黙の後に、
「主人はEDなんです。」
とポツリと話されました。
心の不満を抱えきれなくなっていて、外で満足を得ようとするご自分に対して、倫理上反すると考えるご自分とそれを肯定しようとするご自分と共存していることも気が付いていました。
本当の願いは過去の未解決にあること
Tさんは、心理学を勉強されていて、アダルトチルドレンについてもよく理解していました。
求め続けても得られなかったお母さんからの愛
ご主人に求める愛も
他者に求める愛も
すべては愛のすり替えであり、そこを埋めるためであること。
インナーチャイルドの存在もはっきりと感じ取られました。
「あなたの本当に求めているものをじっくりと感じていきましょう。」
そこにこそ、本当の答えがあることをお伝えして、60分が終了しました。
カウンセラーの感想
初めは、被害者の立場でお話しされていましたが、ご自分のことを話し始めたところから、あなたは自分の無意識と向き合い始めました。
特に、母親に愛されていなかったことに原因があるとお話ししてくれましたが、それは母親に愛されたかった強いお気持ちと表裏一体のものです。
ご自分の目の前で起きていることは、ご自分の心が現実となって表れています。
お母様からもらうべきだった未解決な愛、そしてインナーチャイルドの存在、これらをたっぷりと感じて癒すことで、あなたの意識は大きく変わります。
ご主人との今後は、その心が癒されたときに答えが見えてくるでしょう。
あなたが、「なりたい自分」に心からなろうとしたときに、心と行動が合致し始めます。
それがあなたらしい振動となって、周りに本当の幸せを呼び寄せるはずです。
事例3「体の痛みによる不安」
Wさんの現状
深夜23時頃に60分コースのお申し込みを受けました。
このくらいの時間帯が、なかなか眠れなくて不安になる時間である。
昔から、テレビで難病と闘っている内容のドキュメンタリーなどを見ると、もし自分がそうなったら・・・、と考えてしまう。
数ヶ月前から腰と背中に痛みがあり、もし何か怖い病気だったらどうしようと思ってしまう。
まだ、病院に行っていないのに、何か病気の診断が出るような気がしてしまい、早く病院に行った方が良いと思いつつも、怖くて行けない自分がいる。
辛さの掃き出しと心の整理
Wさんは、入院や手術の経験があり、病気は恐怖だと言い、 腰と背中の痛みについて詳しくお話しになりました。
痛みの波があり、とても痛い日と、そうでない日があるとのことで、友達と出かけたり、楽しいことをしている時には、気にならないけど、友達と別れた後などに、不安になってしまったり、仕事で疲れた日には痛みも強いということでした。
特に、夜中に目が覚めてしまった時などは、不安が襲ってきて朝まで眠れないこともあり、大変辛い時間だそうです。
とても痛い日とあまり痛くない日があるため、不安の感情にも波があるとのことでした。
そして、怖くて病院に行けない自分に、どうして病院に行けないんだろうと、悩んでいらっしゃいました。
そして、まだ病気だと言われたわけではないのに、なんでこんな不安になり、病院に行けないんだろうと苦しい胸の内をお話しになりました。
私は、身体の痛みと心の中の辛さを併せ持つWさんに共感しながら、傾聴しました。
悩みの背景を見つめる
Wさんは、お話の中で病歴や不安感など、昔を振り返っていました。
持病を治そうと、これまでに食事療法や運動療法などにも取り組んでこられました。
子どもの頃から不安になりやすい自分を、自覚し、苦しいこともあったこと。
病気により、仕事を辞め、家の仕事を手伝ってこられたこと。
ご両親は、Wさんにあたたかい言葉をかけてくれること。
Wさんのお話には、努力をしてこられたことや、ご両親が支えてくださっていたことなどが、感じられるエピソードがたくさんありました。
ご自分の掌の中の幸せを大切にされているWさんだからこそ、なおのことそれを脅かされることの苦しみがあったのでしょう。
今ある大丈夫なことへのシフト
Wさんの心の葛藤を整理しながら、カウンセラーとして共に本当の願いを考えてみました。
①病院に行く選択肢
②病院に行かない選択肢
Wさんは、それを選べないことに苦しんでいらっしゃいました。
「選択肢とその先の可能性」を、意識して言葉にしてみることにより、先の見通しを立てることになります。
言葉にすることで、ご自分が本当はどうしたいかが見えてきます。
Wさんは「②を選びたい!①は怖いから避けたい!」と話されました。そして②を選択した場合のリスクも理解していました。
そこで、今「ハッキリしている事実」を二つに分けてみました。
《 大丈夫な事実 》
・難病の診断が、まだついたわけではない。
・背中も腰も痛いけど、マッサージに行って楽になる日もあるので、痛みと付き合っていても、生活に支障はない。
《 辛い事実 》
・今辛いのは、背中と腰が痛いこと。
・葛藤により「心が苦しい」こと。
・悪い方へと考えて不安な感情が出てくること。
これにより、Wさんの辛さの中にある大丈夫な事実を言葉で表し、明確にすることが出来ました。
「辛い事実」は、簡単には消えません。
消えたら楽だろうけど、消えないことも事実として受け止めてみましょう。
そして、この大丈夫な事実の方に気持ちをフォーカスしてみませんかという、カウンセラーのアドバイスに、Wさんはやってみますと前向きな気持ちでお話しになりました。
カウンセラーの感想
Wさんは、葛藤に苦しんでいらっしゃることに加え、身体の痛みまでも伴っているわけですから、本当にお辛いことだと思いながら、共感しながら聴かせて頂きました。
私は心理カウンセラーなので、「病院に行った方が良い」とか「生活に支障ないなら行かなくていい」とかの意見を持つことは避け、Wさんのお話を聴くことで、その心に共感し、一緒に考えることに集中させていただきました。
私のアドバイスはこうでした。
辛さと付き合って行くとき、「今、大丈夫な事実」に意識を置いて考えると、違うものが見えてくることがあります。
今、実際にお持ちの大丈夫は、幻ではないですものね。
二つの選択肢は、どちらもWさんにとって大変勇気のいるものであり、答えが出せないことに共感しました。
答えが見つからないまま、セッションは終了しましたが、私は苦しんで葛藤していることは、簡単に答えが出なくて当然だと思っています。
もう少し時間をかけてもよい「葛藤」なのだろうと思います。
私は、Wさんが、ご自分の意思で① か ② を選ばれたなら、それが正解のように思います。
Wさんのお話からは、努力家なお姿が伝わって来ました。
色々なことを頑張り過ぎてしまうと、心のストレスの重さが、重量オーバーしていることに気づかないこともありますので、時には、息抜きして下さいね。
カウンセリングは、安心して、弱音、本音を遠慮なく吐き出して頂いて大丈夫な場所です。
お困りの時には、またお話をお聴かせ下さい。
事例4「不倫していて辛い」
どんどん彼に惹かれていくMさん
Mさんは、1年半以上前からある既婚男性と不倫関係にありました。
お相手の男性は、Mさんよりもかなり年上で、人生経験が豊富であり、雰囲気、容姿においても、非常に魅力を感じておられました。
そしてどんどん、彼への感情は深くなっていかれました。
惹かれるほど、辛くなっていく
不倫関係を続けていくうちに、彼への想いが一層深まっていくMさん。
そんなMさんとは対照的に、彼は常にマイペース。
時には悪びれる様子もなく、まるで世間話をするかのように家族の話をMさんに聞かせる事もありました。
Mさんにとって、決して気持ちの良い話ではありません。
そんな彼にMさんは、度々自分でも恐ろしくなってしまうほどヒステリックに怒りをぶつけ、やがて激しいケンカへと発展し、最後には別れ話になるのですが、しばらく経つと、
「Mがいないと生きて行けない。」
「君こそが純愛なんだ。」
と、子供のように泣きついてくる彼を振り切る事ができませんでした。
こうして、二人の関係は、彼のペースの上で成り立っていきました。
私がなんとかしてあげなければ
彼はとにかくMさんに甘えを求める人でした。
男女関係はもちろん、仕事面においても、彼はMさんを頼りにしました。
Mさんは、彼から仕事の相談を受けると、精一杯に考え、様々なアドバイスをしました。
彼は素直にMさんのアドバイスを聞き、その通り行動し、仕事は上手く回って行きました。
Mさんを頼る彼。
彼を支えるMさん。
そしてこの連帯感は、Mさんにとって喜びであり、
「私がなんとかしてあげなければ。」
と言う感情の中に、Mさんは自分の存在価値を見いだしていました。
別れては戻るを繰り返す
それほどまでに尽くすMさんに対し、彼は相変わらずマイペースにMさんとの関係を続けていました。
次第にMさんの心に、ある感情が芽生えてきました。
「私はこんなに彼に与えているのに、彼からは何も与えてもらっていない。」
「私ばっかり。。。」
やるせなさは怒りとなり、彼にぶつけては、また激しいケンカになっていく。
そして別れては戻るの繰り返しを続けていました。
続けて90分カウンセリングへ
60分カウンセリングでは、Mさんが抱えておられる苦しみや葛藤を時間いっぱい吐き出されました。
カウンセラーは、その一つ一つ、しっかり傾聴させて頂きました。
そして翌日、
「あの後、話したいことが山ほど出てきたので、続けて聞いて欲しいです。」
「彼の人となりや、私が彼に飲み込まれてるしまっていることをもう少し話したい。」
と再びMさんから、90分カウンセリングのご依頼を頂戴しました。
前夜のカウンセリングの後、Mさんなりに考えを巡らせておられたのでしょう。
そして、この湧き上がる思いを、掃き出し切りたいと決意されたのだと思います。
見えてきた根っこの部分
90分カウンセリングが20分ほど経過した頃、ふとMさんがこんな言葉を呟きました。
「自分でも怖くなるほどヒステリックに激しく彼にぶつかりケンカをすると、なぜか不思議とスッキリとした気持ちになれるんです。」
カウンセラーは、この言葉の裏に大切なことが隠れていると感じました。
そして、可能性が高いのはMさんのお父様の存在であると思いました。
Mさんにお父様の事を伺いました。
お父様との過去
Mさんは記憶を呼び覚ましながら、静かにお父様の事を話し始めて下さいました。
もともとはお父様が大好きだったMさん。
しかし、Mさんが高校2年生の時、お父様が投資に失敗され、何千万もの借金を抱えてしまいました。
その事で、家はめちゃくちゃになりました。
さらに成長していくMさんが、ご自分で決めて行動することに対して、いちいち批判してくるお父様を憎んだり恨んだり、ほんとうに嫌で仕方なかったそうです。
そんな怒りの感情をぶつけることなく、時間は流れ、Mさんが40代になった頃。
お父様が病に倒れてしまいました。
そして、お父様が亡くなられる直前になって、Mさんはお父様に初めて謝罪の言葉を伝えました。
そして、
「愛してるよ。」
と。
お話をして下さりながら、お父様への想いが溢れだし、Mさんは泣いておられました。
気づきを得た瞬間
Mさんは、亡くなられたお父様への想いを消化できていないままに月日を重ねて来られました。
忙しい毎日。
具体的に思い出す事はなくても、潜在的にずっと引っかかりを持っておられたのです。
お父様にぶつけたかった、怒りや憎しみの感情。
お父様にしたかった、精神的な支え。
”本当はお父様にしたかった。”
それらの行動を亡きお父様の代わりに、いくつも年上の彼にしていたのです。
その事に気づいたMさんは、
「父への想いが関係していたなんて、思ってもみなかった。でも、これで、自分の行動に説明がつきました。」
「彼に与えてばかりだと思っていたけど、あれ程までに激しい私の怒りを父の代わりに受け止めてくれていたんですね。そう考えると、感謝すらしていまいます。」
と、少し柔らかく笑っておられました。
家族があっても、仕事が上手くいっていても、沢山の女性に好かれていても、満たされることのない大きな穴を、彼もMさんによって埋めてもらっていたのだと思います。
そしてMさんは、こう言いました。
「これは、 ”愛” ではなく、 ”自分の心の問題” ですね。」
そうおっしゃられたMさんは、まるで何年も解けずにいた難しい数学の問題がやっと解けた時のような、シャキッと、スッキリとした張りのあるお声をしておられました。
カウンセラーの感想
Mさんが苦しんでおられた最初の入り口は、「不倫をしていて辛い。」と言うものでした。
そして、溢れ出てくるままに、あらゆる事を吐き出していく中で亡きお父様への想いが現れてきました。
その想いが彼に向けられていたこと。
最後の出口は、「彼との関係は、”愛”ではなく”自分の心の問題”だった。」と言うものでした。
この気づきは、Mさんが60分カウンセリングで未消化のまま終わらせずに、思いを吐き出し切りたい、そう望むご自分と向き合い、続けて90分カウンセリングを受けてくださった事で辿り着くことができたのだと思います。
これからも、様々な場面で、ご自分と向き合い、気づきを重ねながら、前に進んでくださることを願っております。
ご用命がございましたら、いつでもご連絡をお待ちしています。
事例5「自信が持てない」
大好きな保育園での仕事
Uさんは、幼き日に毎日楽しく通っていた保育園が大好きでした。
「いつかこの園で働きたい。」
それが、幼い頃からの夢でしたが、Uさんには、生まれつき持病がありました。
何気ない日常生活には差し支えありませんでしたが、体力面での注意が必要でした
”この保育園で働きたい”というUさんの気持ちを園長先生、主任の先生、副主任の先生は昔からよく知ってくれており、また、まっすぐな子供たちへの思いも大変認めておられ、「補助として時々来てくれない?」とUさんにお話をして下さいました。
その提案を喜んで引き受け、こうしてUさんは補助として働くことになったのです。
ついていかない気持ち
一日6時間の保育は、想像以上に体に負担がかかりました。
それでもUさんは、
「大好きな仕事を続けたい。先生方の期待に応えたい。」
と、無理を続けて、ついに体調を崩し、休まざるを得なくなりました。
体調が戻り復帰し、体に負担を感じながらも、「まだ大丈夫。」と続けているうちに、また体調を崩し休む事になりました。
”やりたい気持ちはあるのに、体がついてこない。”
このジレンマにUさんは苦しめられました。
大好きな先生方に打ち明けられない
いつもUさんを気づかい、大切に思って下さる先生方。
主任の先生は特にUさんを可愛がってくださり、Uさんにとっても大切な大切な存在でした。
大切な存在ゆえ、
「迷惑をかけたくない。」
「頼ってはいけない。」
と、体調が悪い時には、
「大丈夫?」
と先生が心配して下さる思いに遠慮して、
「大丈夫です。」
と、気丈に振る舞っていました。
本当は、保育を続ける体力がなくて体調を崩したことも、
「この前、遠出したので、疲れてしまったんだと思います。」
と、別の理由を作っては、ごまかしていました。
そんな自分が辛く、また自信が持てませんでした。
カウンセラーは、Uさんの気を遣いすぎる性格を変化させる必要がある事をお伝えしました。
こうして初回は30分カウンセリングのご依頼でしたが、翌日、60分カウンセリングをご希望下さいました。
Uさんは、心から変わりたいと願っておられました。
根っこの部分
前日のカウンセリング終わりに、Uさんの”気を遣い過ぎる性格”を変化させる必要があるとお話したように、その性格が形成されてきたことに焦点を当てて、60分カウンセリングを行いました。
カウンセラーは、Uさんが幼い頃、どのような環境で、何を感じながら成長してこられたのかを伺いました。
Uさんはご両親、お兄様共に仲が良く、何も不自由を感じた事はなかったそうです。生まれつき持病があったUさんを、ご家族、特にお母様は一生懸命に支えて下さっておりました。
いつしかUさんは、悩み事や頼りたい事があっても、
「これ以上、お母さんに迷惑をかけてはいけない。」
と、ご自分の感情にフタをして、一人で抱え込み、我慢していたと打ち明けて下さいました。
これが、Uさんの必要以上に気を遣い過ぎる性格の根っこの部分でした。
気を遣いすぎる” から ”気を遣える
誰かを思いやり、気を遣えるという事は、人として非常に大切な感情です。
Uさんは、この優しさが行き過ぎてしまい、本来ならば素晴らしいはずの、”気を遣える”が、”気を遣い過ぎる”になり、ご自分の感情を犠牲にしながら成長され、これが習慣となり、やがて性格となっていったのです。
カウンセラーは、Uさんと一緒に、 ”気を遣い過ぎる” 部分を程よいものにし、”気を遣える”ように変化させ、相手に気を遣いながらも、Uさんご自身の心も犠牲にすることのない考え方を一緒に話し合いました。
気を遣い過ぎる事は一方通行
気を遣い過ぎると言う事は、ある種の一方通行であり相手の気持ちと交わることを遠ざけていること。
言い換えると、相手に対して、心を閉ざすこと。
素直な気持ちで向き合わないと、いつまでたっても心の距離が縮まらないこと。
いつまでたっても、自分の思いは伝わらないこと。
本当の意味で相手を信頼すること。
そして何より、Uさんにとって大切な人達は、両手を広げてその時をまっていること。
Uさんは電話越しに、カウンセリングの内容を一生懸命にメモを取っておられました。
そして、60分カウンセリングの終わりに、気を遣いすぎていつも受け身であったUさんにひとこと、
「どうすることが良いことか。」
と、相手軸で考えるのではなく、
「自分がどうしたいか。」
と、自分軸で生きていくと
”主任の先生に本音を伝えたいけど、伝えられない。”
と言うお悩みのみならず、Uさんのこれからの人生において、大きく幅が広がるでしょう。
とお伝えすると、ワントーン明るいお声で、
「そうですね。やってみます。」
とおっしゃいました。
勇気と決意が行動に向いていく
更に翌日も、Uさんは60分カウンセリングをご希望くださりました。
「ずいぶんと心の整理ができました。先生に本音を伝えたい。今なら伝える事ができそうです。そこまでの気持ちは出来上がりましたが、いざ先生を前にすると、緊張して、伝えたい事がゴチャゴチャになって、また気持ちをごまかしてしまうんじゃないかと思って。」
と気を揉んでおられました。
当然だと思いました。
幼い頃から気を遣い過ぎる事が習慣になり、当たり前となってから、今まで20数年間その考え方で生きてきたのですから。
そして、今、初めて
”自分がどうしたいか。”
という、自分軸で行動に出ようとしているのですから。
もうひとつの伝える方法
そして、言葉で伝える事が不安であれば、伝える方法はそれだけではありませんし、もしかしたら後から、
”あれも、これも言いたかったのに、伝え忘れてしまった。”
と、なることもあるかも知れません。
今、Uさんの心にある全てを余すことなく伝えたいなら、手紙をかきませんか?
とカウンセラーが提案しましますと、
「そういえば、以前にも主任の先生に手紙を書いた事があります。
いつも気にかけて下さっている事への感謝を伝える為に。」
と振り返っておられました。
先生は手紙を読んで、
「嬉しくてジーンとした。」
とおっしゃったそうです。
しかしそこには、感謝の本音は書けたけど、保育を続ける体力がないことや、先生方の期待に応えようと無理を続けて体調を崩したこと。それを申し訳なく思っていることは、その時、どうしても書くことができなかったとおっしゃっいました。
今度こそ
「でも、今ならその事についての本音も書けそうです。」
と、前向きにおっしゃっいました。
そして一緒に伝えたい事の優先順位を決めて整理していきました。
まず伝えたいのは、どれだけ伝えても足りないほどの感謝の気持ち。
次に期待に応えられなかったことを申し訳なく思っていること。
それをずっと伝えられずにいたこと。
最後に、保育という形ではなくても、大好きな幼稚園の為に、子供たちの為に、自分なりにできる形で、お手伝いしながら関わっていきたいこと。
この3点を順番に手紙に綴ることになりました。
そして、カウンセラーはカウンセリングの終わりに、
上手く書けなくても良い。
何度書き直しても良い。
Uさんが納得いく手紙が書けたら、主任の先生にお渡ししましょう。
とお伝えし、60分カウンセリングが終了しました。
この日もUさんは、話した事を復唱しながら、一生懸命メモを取っておられました。
自分で決めて行動を起こしたとき
3日連続のカウンセリングから5日が経った日、Uさんから60分カウンセリングのご依頼を頂きました。
納得のいく手紙を書くことができ、
「今日、渡そう!」
と心に決めて、保育の時間が終わる時間帯を見計らって主任の先生に会いに行きましたが、先生はお帰りになっており、結局、手紙を渡せなかったそうです。
勇気を振り絞って会いに行った分、会えずに終わった事にガッカリしてしまい、気持ちが沈んでしまったとおっしゃいました。
カウンセラーは、
「保育の時間が終了しても、先生にもプライベートでご都合はあるでしょうから、今日はタイミングが合わなかったのですね。」
「これからもタイミングが合わないことが無いとは言えないでしょうから、また1つ緊張してしまうことが増えてしまいますが、前もって、先生のご都合をお伺いし、二人でゆっくり会える時間を作って頂きましょう。」
「捉え方を変えれば、今日もしお会いできても、他にも先生方がおられたでしょうし、手紙を渡すのもスムーズにできたかどうか分かりませんよね。
ゆっくりお話できる時間もなかったかもしれません。」
「それなら、二人でゆっくりと会える時間を作って頂いて、手紙を渡せるほうが良いかも知れませんね。」
とお伝えすると、
「そうですね。」
と納得された後、
今まで受け身であったUさんから驚きの言葉が飛び出しました。
「そうですね。それから、やっぱり、できるなら、言葉で伝えてみたいです。やってみてダメなら、その時手紙を渡します。」
”自分がどうしたいか”
具体的に発信して下さったのは、何度と続いたカウンセリングでこれが初めての事でした。
私は大変嬉しく思いました。
そして、
”もう、気持ちを伝える事に、迷いは無い。”
そう感じさせられるような、凜としたお声をされていました。
こうして60分カウンセリングは終了しました。
Uさんのその後
最後の60分カウンセリングから1ヵ月ほどが経過した頃、Uさんからご連絡を頂きました。
「あれから、主任の先生と二人で会う事ができて、手紙を渡す事ができました。1度素直に話せると、今までの自分が嘘のように何でも話せるようになりました。」
カウンセラーは、わざわざこうしてその後の経過をお知らせ下さった事に、心から感謝し、また、行動に移せたUさんに、心から感動致しました。
カウンセラーの感想
そして改めて、カウンセリングを受けて下さり、ありがとうございました。
毎回、一生懸命メモをとり、カウンセリングを受けて頂いたこと。
その一生懸命さは、様々な場面で現れていると思います。
そして、そんなUさんだからこそ、先生方に愛されるのだと。
何事も一足飛びには進まず、行動に移すまでが大変ですが、勇気を持って行動されたUさんを尊敬しています。
新たな一歩を重ねながら、Uさんらしく進んで行って欲しいと願っています。
この先、また何かございましたらいつでもご連絡お待ちしています。